マーカー・線引きが効きにくい理由と代替法
すん
2026年7月22日 公開
目次
教科書にカラフルなマーカーを引いたり、重要そうな箇所に線を引いたりするのは多くの受験生が自然にやっている勉強法です。ところが学習科学の知見では、マーカー・線引きは他の勉強法に比べて効果が限定的であることが広く指摘されています。
この記事で分かること:
- マーカー・線引きが効きにくい理由
- より効果的な代替勉強法(想起練習・自己テスト・要約)
- マーカーを「使うとしたらどう使うか」のポイント
マーカー・線引きが効きにくい理由
マーカーや線引きが効果として限定的とされる主な理由は、その行為が受動的すぎる点にあります。
ページを読みながらラインを引く行為は、目で文字を追いながら手を動かすだけで、内容を頭の中で処理・変換・再構成するという作業がほとんど発生しません。つまり、「やった感」は得られますが、記憶に残る深い処理ができていない状態です。
また、マーカーには以下のような落とし穴もあります。
- 重要な箇所の選定に集中してしまう:何が大事かを考えることに意識が向き、内容そのものの理解がおろそかになる。
- 引いた後に読み返すだけで終わる:引いた箇所を後で読み返しても、それ自体が受動的な行為であるため、記憶の強化にはつながりにくい。
- 「見た気がする」という錯覚を生む:きれいにマーカーされたノートや教科書を見ると「理解できている」という感覚になりやすいが、実際の再現力とは別の話。
代替法1:閉じて思い出す(想起練習)
最も効果的な代替法の一つが、**本や資料を閉じて内容を思い出す「想起練習(アクティブリコール)」**です。
具体的なやり方は次のとおりです。
- 一定の範囲(1ページ、1節など)を読む
- 本を閉じる
- 「今読んだ内容で何を学んだか」を紙に書き出すか、声に出す
- 再度開いて答え合わせをする
書けなかった部分・思い出せなかった部分が「本当に定着していない箇所」です。マーカーを引くよりもこちらの方が、どこが理解できていないかが明確になります。
代替法2:自分の言葉で要約する
読んだ内容を自分の言葉に変換して短くまとめる作業も、マーカーより深い処理を促します。
- マーカー:書かれている言葉をそのまま選ぶ(変換なし)
- 要約:内容を理解した上で自分の表現に変える(変換あり)
ノートの余白や別の紙に「この段落は何を言っているか、一言で言うと?」を書き留める習慣をつけると、読み終わった後にも使える要約メモが残ります。
代替法3:自己テストを繰り返す
問題を解く・自分に質問する・フラッシュカードで確認するといった自己テストの習慣は、マーカーに比べて記憶の定着に効果的とされています。
受験勉強での実践例:
- 英単語の意味を紙で隠して日本語だけを見て思い出す
- 歴史の流れを見出しだけ見て内容を言えるか確認する
- 解いた問題を翌日もう一度解き直す
自己テストは「できなかった」という発見がある分、心理的に少しつらく感じるかもしれませんが、それこそが記憶を強化するプロセスです。
デメリット・向いていない人・注意点
- マーカーが完全に無意味なわけではない:初めて読む教科書で「後で戻る箇所に印をつける」目的のマーカーは、あくまで目印として有用です。問題は「引いただけで勉強した気になること」にあります。
- 想起練習は時間と精神的エネルギーがかかる:最初のうちは何も書けない経験が続き、つらく感じることがあります。慣れるまでは範囲を小さく設定するのがおすすめです。
- 自己テストの方法が間違っていると効果が薄い:答えを見ながら「そうだった」と確認するだけでは不十分。できる限り自力で引き出してから確認することが大切です。
- 完全にマーカー禁止にする必要はない:勉強のモチベーションを維持するためにカラフルなまとめを作ることが助けになる人もいます。ただし、それ単体で「記憶の定着」を期待しないことが大切です。
よくある質問
Q1: 色分けしたマーカーなら効果がありますか?
A1: 色の意味付け(例:赤=最重要、青=関連語)をして後から活用できるなら多少の整理効果があります。ただし、色分けの作業自体に時間を使いすぎると本末転倒になるので、ルールは最小限にとどめましょう。
Q2: きれいなノート作りは意味がないですか?
A2: きれいにまとめること自体は悪くありませんが、目的が「作ること」になってしまうと危険です。作ったノートを使って「見ずに説明できるか」「問題を解けるか」という形で活用することが大切です。
Q3: 教科書への書き込みと線引きは違いますか?
A3: 「なぜ?」「どういうこと?」「自分の言葉での解釈」などを書き込む場合は、思考の処理が伴うため単純な線引きより学習効果が高くなります。余白への自分のコメントは有効な方法です。
Q4: アンダーラインを引いた後に想起練習をすれば意味がありますか?
A4: はい。線引きそのものより「その後に本を閉じて思い出す」ステップが重要です。線引きを起点として想起練習まで行うことで、ラインが有意義な役割を果たせます。
Q5: まとめノートと想起練習はどちらを優先すべきですか?
A5: 時間が限られているなら想起練習を優先することをおすすめします。まとめる作業は整理の助けになりますが、「閉じて思い出す」という繰り返しの方が記憶の強化に直接つながります。
Q6: 想起練習をしていると何も思い出せずに時間を無駄にした気がします。どうしたら良いですか?
A6: 思い出せないこと自体が学習の重要なプロセスです。少し考えてから答えを見て、また次回再挑戦する、という繰り返しで記憶は強化されます。「何も書けなかった」のは理解が必要な箇所を発見したサインとして前向きに捉えましょう。
まとめ
マーカーや線引きは「勉強している感」を与えてくれますが、それ自体の記憶定着効果は限定的です。代わりに、本を閉じて思い出す・自分の言葉でまとめる・問題を解くといった能動的なアプローチを取り入れることで、同じ時間でも定着率を高められます。今日から一つの章を読んだ後に、本を閉じて思い出す時間を1〜2分作ってみてください。
※本記事は一般的に知られている学習科学・心理学の知見をもとに整理したものです。
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Photo by Lauren Sauder on Unsplash
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